クロサワバイオリン オールド館Presents 弓フェア
20世紀の至宝 ～Eugène Nicolas SARTORY

　ユージン・ニコラ・サルトリー(1871年ミルクール生まれ、1946年没)は、20世紀最高と言われるフランスの有力な弓製作者です。ミルクールの父のもとで修行した後、パリでシャルル・ペカット、ジョセフ・アルフレッド・ラミー(父)のもとで働き、1889年に18歳で自分の店を構えました。優れた才能と作品によって1910年には完全に自給自足で製作するようになります。
　ラミーの影響を受けつつもより重く、より広いヘッドを作り出し、何十年にもわたって一貫して守ってきた弓のスタイルを発展させました。初期のサルトリーは濃い色のペルナンブコ材を好んでいますが、後期の弓は一般に明るい色をしていることが多いです。
　ヴィネロンやフェティークも強度や操作性においてサルトリーに匹敵する弓を製造しましたが、サルトリーの弓の一貫性はたとえ古く繊細さに欠けていても、音楽家の間で長年にわたって愛用されているのです。サルトリーの弓は演奏の道具として完璧に信頼できるものであり、さまざまな著名な奏者が使用しています。サルトリーの最初のパトロンのひとりがベルギーのヴァイオリンの名手、ウジェーヌ・イザイであることからも、彼の作品に奏者が強い親近感を抱いていることがわかります。
　アシスタントにはルイ・モリゾ(ペレ)、ジュール・フェティーク、ルイ・ジレなどがおり、それぞれが有名な製作者となりました。サルトリーの弓は模倣が多く、サルトリーは自身の工房から出荷される弓の品質には常に目を光らせていました。”E.Sartory à Paris”の刻印が柄の部分とラッピング下によく見られます。