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コラム

宮田大 コーダ・ボウを弾く

カーボンファイバー弓として人気の高いコーダ・ボウ。今回、その最高モデルとチェリスト宮田大が出会った。その印象を宮田が語る。

※この記事は2021年10月に発行された「サラサーテ Vol.102」の記事から一部抜粋したものです。

宮田大の求める弓の個性は

 ビギナーからプロフェッショナル向けまで幅広いラインナップを揃え、カーボンファイバー製の弓としてお馴染みとなったコーダ・ボウ。アメリカ合衆国で1990年代に誕生して以来、多くの弦楽器奏者に愛用されている。“プレイヤーのニーズに寄り添う、最高の弓だけを提供する”という創業者の信念が各製品に込められている弓だ。今回、日本を代表するチェリストで本紙連載でもおなじみの宮田大が、コーダ・ボウと出会った。

 「普段使っている弓は、フェティックの作です。20代前半から長く使っているこの弓は、“剛弓”ともいわれる強さを持っています。大きなホールで演奏する時、楽器を十分に鳴らすためには弓に重みをかける必要があります。弱い弓では、時として木と弦が当たってしまうことがあるのです。コンチェルトを弾かせていただく機会の多い私には必要なものです」と宮田は愛用している弓のキャラクターとその特徴を説明する。

 「しかし、弓には寿命があると聞きます。フェティックの弓を休ませるため、それと同じくらいの強さを持ち、かつ細やかさがある他の弓を持ちたいと考えました」と宮田。「ヨーロッパでも弓を探しました。しかし、試した弓は繊細なものが多くて、私が必要としている強い弓は見つからなかったのです」と探すのに苦心したエピソードを語る。 そんな時、宮田はクロサワバイオリンの担当者と話す機会があった。「強い弓を探している」という彼の希望を叶えるため、試奏が行われた。

宮田が実際に使用しているCodaBow Marquise GS

強く、かつ繊細な弓だった

 「8本くらいの弓を試奏しました。その中の1本がこの弓でした」と宮田が選んだのがコーダ・ボウのMarquiseだった。「自分の希望にマッチしました。この弓はカーボンファイバー製で張りがあり、押し込んで弾いても折れる心配もありません。その強さだけではなく、中に繊細さを感じました。強さと繊細さの比率が自分にとっては理想とするものでした」と印象を語る。「カーボンファイバーの弓は以前にも試したことがあるのですが、数年ぶりに弾いて“木の弓に近づいていること”にびっくりしました。これならば、普通にプロの演奏家が使っていけるのではないか、と確信もしました」とMarquiseの可能性にも言及する。

 Marquiseは、コーダ・ボウの中で最高ランクのモデル。アメリカ合衆国の弓製作家の重鎮であるロジャー・ザビンスキー監修で設計され、棹部分のコアにオーガニックファイバーを採用した弓だ。カーボンファイバーのみでは困難だった表現が、オーガニックファイバーと併用することで可能となった、とメーカーは説明する。

 「今回、カーボンファイバー弓の1本1本に個性があることに気がつきました。雰囲気が違います――他にもいい弓を見つけてみたいという探求心も出ました。そして、木の弓と音の響き方が違うことにも。木の弓では棒の部分から音が出ていますが、カーボンファイバーでは少しふるまいが異なります。これらを解釈・理解をして練習することで、木の弓で演奏する時にいろいろできるようになると思います。初心に帰ったような感じですね」と宮田。「いい弓が少なくなってきている今、カーボンファイバーの弓の可能性は大きいですね。学生も困っていますので彼らを助けることにもなります。持っている弓を大切にする意義も大きいでしょう。日本武道館のような大きな会場でPAを使う、屋外でマイクを通すときなども良いでしょう。動画配信も積極的に行われている、今の世の中にマッチした弓ではないか、と思います」と宮田は結んだ。

出展:サラサーテ Vol.102 「特別企画 宮田大コーダ・ボウを弾く」
サラサーテWEBサイト http://sarasate.me/

宮田大プロフィール

2009年ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールにおいて、日本人として初めて優勝。これまでに参加した全てのコンクールで優勝を果たしている。その圧倒的な演奏は、作曲家や共演者からの支持が厚く、世界的指揮者・小澤征爾にも絶賛され、日本を代表するチェリストとして国際的な活動を繰り広げている。
スイスのジュネーヴ音楽院卒業、 ドイツのクロンベルク・アカデミー修了。
チェロを倉田澄子、フランス・ヘルメルソンの各氏に、室内楽を東京クヮルテット、原田禎夫、原田幸一郎、加藤知子、今井信子、リチャード・ヤング、ガボール・タカーチ=ナジの各氏に師事する
これまでに国内の主要オーケストラはもとより、パリ管弦楽団、ロシア国立交響楽団、ハンガリー放送交響楽団、S.K. ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団、スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団などと共演している。
「小澤征爾さんと音楽で語った日~チェリスト・宮田大・25歳~」(芸術祭参加作品)、「カルテットという名の青春」「NHKワールド “Rising Artists Dai Miyata”」などのドキュンメント番組のほか、「題名のない音楽会」「徹子の部屋」「クラシックTV」「クラシック倶楽部」「らららクラシック」「報道ステーション」「日経スペシャル招待席~桐竹勘十郎 文楽の深淵」「ミュージックステーション」など、メディアにも数多く出演している。
無伴奏チェロ・リサイタルでサントリーホール、ミューザ川崎など 2,000 席以上のホールが満席になったことでも話題を呼んだ。
近年は国際コンクールでの審査員や、ロームミュージックセミナーの講師を務めるなど、若手の育成にも力を入れている。
録音活動も活発で、最新アルバムは2022年10月に『ラフマニノフ:チェロ・ソナタ』をリリース。2021年にウェールズ弦楽四重奏団、三浦一馬、山中惇史らを迎えた「Piazzolla」。2020年はギタリスト・大萩康司との初のデュオアルバム「Travelogue」。2019年はトーマス・ダウスゴー指揮、BBCスコッティッシュ交響楽団との共演による「エルガー:チェロ協奏曲」をリリース。欧米盤が、欧州のクラシック界における権威のある賞の一つ「OPUS KLASSIK 2021」において、コンチェルト部門(チェロ)で受賞。
使用楽器は、上野製薬株式会社より貸与された1698年製A. ストラディヴァリウス“Cholmondeley”である。

宮田大オフィシャルサイト : https://daimiyata.com/
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